土井先生。 ごはんは土井善晴流で炊くのが美味すぎる! 洗い米と土鍋でふっくらモチモチの炊きあがりに

個人的には、は組&土井先生祭り

土井先生

蝉の声が賑やかな暑い日 大好物の昼食を食べ、満足そうな学園長が団扇を扇ぎつつ、教職員長屋の廊下を 歩いていた。 木下の部屋の前を通ると、開けっ放しの入り口から、木下と山田が 紙を見て話している姿が見えた。 「これはこれは木下先生、山田先生、何を見とるんじゃ?」 興味を持った学園長は木下の部屋へ入っていった。 「ああ、学園長先生」 「5年生の試験結果を見ていたんですよ」 二人は顔を上げた。 「ほほう、試験結果?」 学園長は紙を受け取る。 試験内容は『変装』 どの生徒も優秀な成績だった。 山田は顎を撫でつつ、感心した。 「素晴らしい成績ですなぁ」 「まぁ5年生ですからな」 「特に鉢屋三郎に関しては、非の打ち所がありませんな」 「変装が特技ですからな」 二人の満足そうな会話を聞きながら、学園長は成績をじっくり眺めた。 生徒の成績がよい。 学園長としては鼻が高い話だろう。 しかし学園長の口から出た言葉は・・・ 「・・・・・つまらん」 「は?」 山田、木下共に聞き返す。 「つまらんのう!」 「はぁ」 「全員高得点じゃ張り合いなかろう!!もっとドキドキワクワク せねば!!」 「ドキドキワクワクって;;」 「学園長、これ試験ですぞ?」 「う~ん・・何か良い策は・・・・」 山田と木下の言葉など、聞こえていない。 学園長は団扇を仰ぎながら、天井を見つめた。 嫌な予感 山田と木下は眉間に皺を寄せて学園長を見た。 「そうじゃ!!思いついた!!!」 二人は「・・・思いついちゃった」と心の中で嘆いた。 「・・・・・・・へ?」 自室でのんびりお茶を飲んでいた土井は口をぽかんと開けたまま 固まった。 「だから、また学園長先生が思いついちゃったんですよ」 部屋に戻った山田はうな垂れて座った。 「・・・な、何を?」 土井は聞きたくなかったが、恐る恐る聞いた。 「変装大会」 「はぁ・・」 「明日は丸一日変装して高得点を競うらしい」 「丸一日って・・・授業はっ?!」 「ああ、参加資格は上級生だけだから、我々は通常通り授業していて 構わない」 それを聞いた土井はほっとしてお茶を飲んだ。 「しかしだな・・・変装の課題ってのが・・・」 山田はちろりと土井を見た。 一方、庄左ヱ門の部屋も大騒ぎだった。 「変装大会いいいいいいっ?!」 緊急招集がかかった は組は輪になって座り、庄左ヱ門の話を聞いて 驚く。 「ああ、参加資格は4年生から6年生まで」 「じゃ、オレ達関係ねーじゃん」 きり丸は頭の後ろに手を組み、壁に寄りかかった。 「ところがどっこい!」 「どっこい?」と全員が思ったが、突っ込む余裕はなかった。 「変装の課題ってのが土井先生!」 全員の頭上にお腹を押さえて青ざめている担任が浮かぶ。 「さらに!」 庄左ヱ門はまるで怪談でもしているかのような顔つきだ。 「ターゲットはボク達1年は組」 「・・・・・・・・・・・」 全員固まる。 しんべヱはもはや目が離れて鼻水が垂れていた。 「つまり、上級生が土井先生に化けて、ボクたちを騙しに来るってこと」 「げええええええええ」 「なんだそれ!!」 「なんでボク達なんだよ!!」 非難轟々。 「何故は組がターゲットか、だって?」 「そんなの明白だろ」 部屋の外ににんまり笑っている忍たまがいた。 「左七!」「伝吉!」 「違う!左吉だ!」 「伝七!!」 お馴染みのやりとりを苛立ちながらする。 「つまり、アホのは組は騙しやすいから」 「先輩達は土井先生を課題にリクエストしたんだろ」 済ました顔で解説した。 「課題って・・・上級生のリクエストなの?」 乱太郎が庄左ヱ門に問うと、庄左ヱ門は頷いた。 「じゃあ、せいぜい頑張りたまえ」 片手を上げて、涼しげに去っていく。 「ちっきしょ~~~」 「あったまきた!!」 「絶対見破ってやろうぜ!!」 金吾、団蔵、きり丸の目が燃える。 庄左ヱ門は説明を続けた。 「もしも上級生をボク達が『土井先生』と呼んでしまったらアウト。 その上級生には得点が入る。 一番得点の多い生徒が優勝するんだ」 「んじゃ、全員とりあえず『先輩』って呼んどきゃいいんじゃねーの?」 にんまり笑ったきり丸に、庄左ヱ門が首を横に振った。 「いや、もしも土井先生本人を誰か一人でも間違ったらボク達がアウト。 でも間違えなかったら」 「間違えなかったら?」 「ご褒美に食券1週間分貰えるって」 「食券?!1週間?!」 予想通り、1名の忍たまが銭目になり、大喜びで立ち上がった。 「あ、そうそう、ちなみにしんべヱを騙せた場合、ポイントが2倍」 「ボク?」 しんべヱがきょとんとした。 「あ、そっか、しんべヱは鼻が利くから」 乱太郎が納得した。 「あときり丸を騙したら」 「え?オレ?」 「ポイントはなんと3倍」 「え?なんでオレ?聞き間違いじゃないか?」 「いーや、きり丸」 「なんでだよ、鼻利かねーし」 動揺しているきり丸を、全員がにんまりして見つめた。 「・・・・・なんだよ?」 冷や汗をかいた。 「気をつけろよ、きり丸~」 「みんな狙ってくるぞ」 兵太夫と虎若が脅かす。 「・・・・・・;;」 [newpage] 翌朝 大会といっても内容が変装なので、特に学園長の挨拶もなく、 静かな朝を迎えた ・・・・・が 「どーせならさぁ、オレ達の授業がつぶれるような大会だったら 良かったのにな~」 「それじゃ土井先生が可哀想だよ」 乱きりしんがわいわい話しながら食堂へ入ると 「げげっ」 あまりの光景に妙な声を上げて一歩退いた。 食堂の中が土井だらけ。 どの土井も平然と朝食をとっている。 「なんじゃこりゃぁ」「うわぁ・・・」「せんせーがいっぱい」 3人とも苦笑した。 一人の土井がお膳を下げ、乱きりしんに近づいた。 「やぁお前たち」 前髪を掻き揚げる。 「これから朝食かい?」 ニヤリと笑うと歯がキラリと光る。 背後には何故か溢れるほどの薔薇が見えた。 「おはよーございます、滝夜叉丸先輩」 3人が声を揃えてペコリと挨拶すると、目の前の土井に雷のような 衝撃が走った。 「ななななななぜ私が滝夜叉丸だと?!」 「バレバレっすよ先輩」 きり丸はげっそりした。 「そうか、完璧に変装したつもりだったが・・・・私の美しさは隠しきれなかったと いうことか!」 滝夜叉丸はうっとりしながら前髪を再度掻き揚げた。 ふんふん鼻歌を歌いながら食堂を出て行く。 「自分に酔ってる土井先生って・・・・気味悪いね」 滝夜叉丸の背後を見ながら乱太郎が呟いた。 「ああ、恐ろしいな」「見たくなった」 きり丸しんべヱも散々なことを言ってると、また向こうから一人の土井が やってきた。 青ざめてお腹を押さえている。 すれ違った滝夜叉丸より明らかに背が高い。 「土井せんせーおはよーございます!」 「ああ、おはよう・・・・ん?よく私だとわかったな」 土井が驚くと、3人は嬉しそうに笑った。 そして土井が食堂に入ろうとすると、きり丸が止めた。 「あー先生、今入らない方がいいっすよ?」 「なぜだ?」 と聞きつつも食堂に入ると、「うぉっ」と変な声を上げて一歩退いた。 胃がキリキリと痛む。 「いててててて」 「だから言ったんすよぉ」 きり丸が心配そうに土井のお腹を擦った。 土井はきり丸の頭を撫で、「ありがとう、大丈夫だ」という無言の合図をした。 お膳をおばちゃんから受け取ると、幸せそうに冷奴を食べている土井の前に 座った。 「兵助、聞きたいことがある」 「なんでボクだってわかったんですか!!」 「一目瞭然だ!なんで課題が私になったんだ!誰だ私をリクエスト したのは!」 「ええと、全員・・・かな?」 それを聞くと、土井の目から だばーっと涙が溢れた。 「・・・ウチの子はそんなに上級生からバカにされてるのか;;」 「違います!違いますって!」 兵助が焦って両手をばたばた振っていると、猫のような丸みのある口をした 土井がゆったりとやってきた。 「あぁ~もう、土井せんせーったら!」 前髪をいじりだした。 「また髪が痛んでるぅ。 食後、グラウンドを歩いていると、全身土まみれで黙々と 穴を掘っている土井、 「いけいけどんど~~~ん」と言いながら走っている土井を見かけた。 校舎の傍ではケンカしている土井と土井。 「あれ、絶対潮江文次郎先輩と食満留三郎先輩だよね」 きり丸が小声で言うと、乱太郎としんべヱがうんうんと頷いた。 「先輩達、やる気あんのかな~~」 は組の教室で頬杖を突き、三治郎が呟いた。 「さっき図書室行ったらさ、もそもそ話す、暗~~い土井先生がいたよ」 伊助が言うと、周りは笑った。 「いやみんな、油断するな。 まだ一番手強い先輩に会ってない じゃないか」 庄左ヱ門が言うと、みんな真剣な顔つきになた。 「鉢屋三郎先輩、いつ来るかな」 しんべヱが小声で話した。 「三郎先輩だけは本気で騙しに来そうだよね」 乱太郎もついつい小声になる。 周りはうんうんと頷いた。 予想していると鐘が鳴り、土井が入ってきた。 「ほら静かに!授業始めるぞ」 土井の一声で全員の背筋が伸びる。 「本日は名声で取り入る術の復習を行う」 土井が黒板に書き、生徒は素早く忍たまの友を開いた。 「あの・・・」 一人の忍たまが手を挙げた。 「なんだ?庄左ヱ門」 「今日の予定はそのページではありません」 「え?そんなハズは・・・」 土井は慌てて自分の忍たまの友を開いた。 「土井先生は珍事出来開閉門の術を行うとおっしゃってましたよ、 ・・・・鉢屋三郎先輩」 冷静な庄左ヱ門の最後の言葉に、全員がぎょっとした。 「え?この人ニセモノ?!」と叫びたかったが、食券がかかっているので 我慢した。 「・・・まいったなぁ、なんでわかった?」 「なんとなく・・・同じ委員会だからでしょうか」 三郎は苦笑して変装を解いた。 雷蔵の顔になる。 「じゃ、大人しく退散するよ」 片手を上げて、あっさりと出て行った。 代わりにうんざりした土井が入ってきた。 「では授業を始める」 「せんせー、先輩達の見方するなんてズルイ~~~!!」 「授業遅れてるんじゃないっすか~~~?!」 伊助、きり丸が文句を言うと、そーだそーだと皆で騒いだ。 「仕方ないだろっ!!学園長命令だったんだから!! 今日はとばすぞ!珍事出来開閉門の術とは・・・」 馴染み深い授業が始まった。 昼食をとろうと食堂へ向かうと、今朝掘られた穴に落ちている 土井がいた。 「伊作せんぱ~い、大丈夫ですか~」と乱太郎が声をかける。 食堂に入ると、澄ました顔で上品に味噌汁を飲む土井。 喜三太としんべヱが抱きついた。 昼食を終えてグラウンドに行く途中、石火矢に頬釣りしている土井と すれ違った。 [newpage] 「やっと半日終わったな」 「頑張ろーぜ」 団蔵と金吾が言うと、は組全員「おー!」と手を挙げた。 「こらこら何やっとるか!授業を始めるぞ!」 グラウンドに山田が手を叩きながら来た。 慌てて整列する。 「えー、本日は落とし穴を作る練習をする。 裏裏裏山まで走るぞ!」 「ええええ~~~」 「ホレ文句言うな!走れ!」 は組は口を尖らせながらも山田を先頭に忍術学園を出た。 幾らか風はあるものの、陽射しが強い。 数分走っただけで、忍たまは汗びっしょりとなった。 やっとの思いで裏裏裏山に到着すると、全員地べたに寝そべった。 「なんだなんだ、だらしない」 全く息が乱れていない山田は呆れた。 「だって・・・はぁはぁ・・・」 「こんなに暑いし・・・はぁはぁ」 「そんなことでどうする!ん?!しんべヱはどうした!!」 「ここですぅ~~~」 遅れて顔を真っ赤にして走っているしんべヱと、付き添いの乱太郎 きり丸が来た。 「よし、これで全員だな!ではこれより落とし穴を各自作るように!」 休む間もなく授業が始まった。 「なお、ここから北西につり橋があるが、あれは壊れとる。 絶対渡らんように! あと、西には崖があるから注意するように!では開始!」 「はぁい」 は組はよろよろと散った。 乱太郎は南の方へ行った。 高い樹が生茂り、焼けるような陽射しが届かない。 「ここは涼しいな~よし、ここに決め~た!」 鋤を出し、土を掘り始めた。 きり丸は西の方へ行った。 「どこにすっかなぁ~」 暫く歩くと、水の流れる音が聞こえた。 「・・・川か?そういや山田先生が崖があるって言ってたな。 北に行くか」 きり丸は向きを変えた。 自分の腰まである草を掻き分けて進む。 「歩きづらいな~・・・・・ん?」 草を掻き分けたところに、キラリと光るもの。 「小銭っっ!!」 素早く拾った。 じっくり見る。 正しく、本物の小銭。 目の前を黒い物体が風のように横切った。 驚いたきり丸は尻餅をつく。 そして手には何も無くなっていることに気付いた。 見上げると、高い位置にカラス。 嘴には小銭らしきものが光っている。 きり丸は北西の方へ走っていった・・・・・ [newpage] 「山田先生!」 腕組みしながら生徒達の様子を見ていた山田のところに、もう一人の 担任がやって来た。 「ああ、土井先生、明日の授業の準備は終わりましたかな?」 「はい、私も実技の手伝いをします」 「そりゃ助かる」 そこに庄左ヱ門、伊助、三治郎が来た。 「山田先生、完成しました」 「うむ」 次に虎若、兵太夫、乱太郎、団蔵、金吾が来た。 少し遅れて喜三太。 喜三太は肩にナメクジを沢山乗せていて、山田にゲンコツをくらう。 最後にしんべヱが息を切らせて戻ってきた。 「大丈夫?しんべヱ」 乱太郎が駆け寄ると、「お腹すいたぁ」と目を回して仰向けに倒れた。 「ん?きり丸はまだか?」 一人足りないことに山田が気付くと、は組はきょろきょろと辺りを見回した。 「あのアホガラス~~~!!」 草むらから出ると深い谷とつり橋があった。 遥か下には流れの激しい川。 カラスは悠々と向こうの山へと飛んでいった。 「逃がすか!」 きり丸にはカラスしか見えていない。 つり橋を駆けて渡る。 ギシ・・・ 嫌な音に気付き、きり丸は立ち止まった。 「あ・・・しまっ・・・」 気付いた時にはもう遅かった。 腐った板がボロボロと崩れ、縄が引きちぎれた。 「まったく、アイツは穴掘るのにどんだけ時間かけてんだ」 山田が苛々しながら辺りを見回していると・・・ 遠くからきり丸の悲鳴 「きり丸だっ!!」 は組全員、青ざめた。 「向こうから声がしましたね」 土井は北西へ振り返った。 「まさか、あのつり橋を・・・」 山田が言い終わらないうちに、土井が駆け出した。 「きり丸!!」 は組も土井の後に続こうとしたが、山田に止められた。 「落ち着け!お前たちまで落ちるぞ!」 土井は数分も経たぬ内につり橋に着いた。 橋の中央の板がほぼ抜け落ち、縄も一本だけ繋がっている状態だ。 その橋の下に、切れた縄に捕まって今にも落ちそうなきり丸がいた。 土井は縄をきり丸に投げようとした・・・・が、 ブチッ 掴んでいた縄が切れた。 きり丸は仰向けの状態で、落下していく。 「きり丸!!」 土井は何の躊躇いもなく、きり丸目掛けて崖から飛び込んだ。 地面を蹴って飛び込んだ分、土井の落ちるスピードが速く、落下していくきり丸を 捕らえた。 左腕で抱きしめると、右腕で鉤縄を投げた。 無理な体勢であったにも関わらず、鉤縄は崖から突き出していた枝に 引っかかった。 振り子のように崖の側面に引き寄せられるが、土井は側面に着地するかのようにして 衝撃をかわす。 きり丸を見ると、相当怖かったのか、自分の腰に痛いくらい抱きつき、 震えていた。 [newpage] 「土井せんせーってば~~~」 忍術学園に戻る は組の後方を土井ときり丸が歩く。 「もう小銭につられないからっっ!!許してくださいよ~~」 「ダメだ!!まったくお前は!!」 つり橋に行った理由をきり丸から聞いた山田は開いた口が塞がらず、 土井は胃がキリキリと痛み出した。 担任二人に怒られ、さらに帰り道、罰を受けている。 もう勝手に危ない場所へ行かないようにと、土井に手を繋がれている ・・・・・という罰。 痛くも痒くもない罰だが、きり丸には恥ずかしくて堪らない。 前を歩く は組の仲間が後ろを振り返っては、にんまり笑う。 忍術学園の門を潜ると、きり丸は慌てた。 「せんせ!手!手!もういいでしょ?!」 「ほんとに反省してるのか?」 「してますしてます!」 上級生や、ましてや い組に見られたら、なんと言われるか。 真っ赤になっているきり丸を見下ろし、ふと疑問が生じた。 「きり丸・・・・そういえばどうしてわかった?」 「へ?」 「今朝といい、なんで私だとわかったんだ?」 上級生の変装大会など、すっかり忘れていた。 しかし何故わかったのかと言われても・・・・・ 何の迷いもなく飛び込む姿 自分を抱きしめる、逞しい腕 無理な体勢で鉤縄を投げる忍者としての腕前 本気で自分を心配して怒る姿 抱きついた時、手を繋いでいる時の温かいぬくもり・・・・ どれも土井先生。 疑う要素はどこにもない。 「・・・・だって土井先生は土井先生だもん」 俯いて小声で答える。 答えになってない返答に土井は首を傾げると、一人の土井がやってきた。 「それが、きり丸相手だとポイントが3倍になる理由だよ」 自分に話しかけてくるこの上級生は誰だろうと思っていたら、 土井が「雷蔵」と呼んだ。 「えっと・・・どういうことですか先輩」 「つまり、忍術学園でも家でもいつも一緒なのはきり丸だろ? 一番土井先生をよく知っているってことさ」 「そんなことないっすよ?土井先生、隠し事多いもん」 「コラコラ、人聞きの悪いこと言うな」 土井はきり丸の頬を軽く突付いた。 そこにまた二人の土井がやってきた。 「それに、『は組は騙しやすいからターゲットになった』って思っている ようだけど」 その土井は庄左ヱ門の頭を撫でた。 「えーと・・・尾浜勘右衛門先輩?」 「当たり」 「騙しやすいから・・・じゃないんですか?」 もう一人の土井が説明した。 「6年生も は組がいいと言ったんだぞ?あの先輩方が楽な課題を 選ぶと思うか?」 三治郎、虎若が「あ、竹谷八左ヱ門先輩だ」と気付いた。 「言われてみれば・・・」 「確かに・・・」 団蔵、金吾が自分の委員長を想像して納得した。 「じゃあ何故ですか?」 庄左ヱ門が聞くと、勘右衛門は笑った。 「一年は組が一番団結力があるからだよ」 言われた は組はきょとんとした。 「お前たちはよく担任の家に遊びに行ってるし、いつも一緒だし トラブルにもよく巻き込まれて、それを乗り越えているし」 「つまり結束が固いから、ニセモノを見抜く力も高い」 勘右衛門と八左ヱ門が説明した。 「ということはつまり・・・・」 は組全員で声を揃えて言う。 「それに、一年は組は騙したくなるほど可愛いからね」 雷蔵がにっこり笑った。 土井はこっちが本音だろうなと思い、苦笑した。 「あと、土井先生はボク達が大好きな先生ですから」 兵助と三郎も来た。 「教師相手に喜車の術を使うな;;」 土井はそう言いながらも頬が赤い。 「・・・私も、一年は組の担任なんだが」 山田がぽんと三郎の肩に手を乗せると、三郎は焦って「山田先生も 人気です」とフォローした。 「やれやれ、今のところ得点者はゼロか」 学園長が杖をつきつつ現れた。 「一年は組、なかなかやりおるのう」 そう言われると、は組は嬉しそうに笑ったが、上級生が本気でないので、 担任は喜べない。 「しかし、このままではつまらん。 何かもっとワクワクするような・・・」 そこへ 「土井半助ええええええええええ」 頭上から雄叫びが聞こえた。 見上げると、学園を囲っている屏の上に、諸泉尊奈門が立っていた。 縄鏢や鉄双節棍を振り回している土井 「ギンギーン」「いけいけどんどーん」と叫んでいる土井 沢山の宝禄火矢をジャグリングのように華麗に扱っている土井 石火矢を引き連れている土井 美しいポーズを決めて戦輪を回している土井 穴から顔を出している土井 鋏と櫛を持っている土井 「うおっっ?!なななななんだこれ?!」 尊奈門は仰け反る。 「プロ忍と勝負か!面白い」 文次郎の土井がニヤリと笑った。 「待て、ここは私がやる」 「いやオレだ!いっぺんコイツと戦ってみたかったんだ!」 仙蔵、留三郎も前に出た。 「いえ先輩!ここは私に!」と滝夜叉丸が前に出たら 「こいつは私の獲物だ!」と小平太が頭を押さえた。 「うああああああ、なんだなんだ?土井だらけじゃないか!」 尊奈門がうろたえていると、学園長の頭上にぴこんと電球が光った。 「いいこと思いついた!!」 「は?」 「これより変装大会を尊奈門対決大会に変更する!」 「なにいいいいいいいい?!」 尊奈門だけぶっとぶ。 「短時間で尊奈門に勝った者が優勝じゃ!!」 「ちょっと待て!私が負けるのが前提か!!」 嘆いていると、5年生の土井も寄ってきた。 「いい実戦経験になるぜ」 「腕試しにはちょうどいい」 八左ヱ門と兵助が指を鳴らした。 他の上級生もやる気満々で詰め寄る。 救急箱を持った土井だけは穏やかに「尊奈門さーん、気をつけて くださいねー」と待機していた。 「私は本物の土井と勝負がしたいんだああああああ」 尊奈門が屏の上を走って逃げると、上級生が一斉に 「うおおおおおおおおお」と追いかけた。 「結構気付かれないもんですね」 きり丸は、は組の後ろにしゃがんで隠れている本物の土井に 声をかけた。 「いいんですか?土井先生、尊奈門さん大変なことに なっちゃってますけど」 乱太郎が苦笑していると 「これに懲りて、諦めてくれるといいんだがなぁ」 と土井はため息をついた。 きり丸は真顔で土井の耳元で囁く。

次の

スーパードクター.com(乳がんの名医 土井卓子先生に関する詳細情報)

土井先生

蝉の声が賑やかな暑い日 大好物の昼食を食べ、満足そうな学園長が団扇を扇ぎつつ、教職員長屋の廊下を 歩いていた。 木下の部屋の前を通ると、開けっ放しの入り口から、木下と山田が 紙を見て話している姿が見えた。 「これはこれは木下先生、山田先生、何を見とるんじゃ?」 興味を持った学園長は木下の部屋へ入っていった。 「ああ、学園長先生」 「5年生の試験結果を見ていたんですよ」 二人は顔を上げた。 「ほほう、試験結果?」 学園長は紙を受け取る。 試験内容は『変装』 どの生徒も優秀な成績だった。 山田は顎を撫でつつ、感心した。 「素晴らしい成績ですなぁ」 「まぁ5年生ですからな」 「特に鉢屋三郎に関しては、非の打ち所がありませんな」 「変装が特技ですからな」 二人の満足そうな会話を聞きながら、学園長は成績をじっくり眺めた。 生徒の成績がよい。 学園長としては鼻が高い話だろう。 しかし学園長の口から出た言葉は・・・ 「・・・・・つまらん」 「は?」 山田、木下共に聞き返す。 「つまらんのう!」 「はぁ」 「全員高得点じゃ張り合いなかろう!!もっとドキドキワクワク せねば!!」 「ドキドキワクワクって;;」 「学園長、これ試験ですぞ?」 「う~ん・・何か良い策は・・・・」 山田と木下の言葉など、聞こえていない。 学園長は団扇を仰ぎながら、天井を見つめた。 嫌な予感 山田と木下は眉間に皺を寄せて学園長を見た。 「そうじゃ!!思いついた!!!」 二人は「・・・思いついちゃった」と心の中で嘆いた。 「・・・・・・・へ?」 自室でのんびりお茶を飲んでいた土井は口をぽかんと開けたまま 固まった。 「だから、また学園長先生が思いついちゃったんですよ」 部屋に戻った山田はうな垂れて座った。 「・・・な、何を?」 土井は聞きたくなかったが、恐る恐る聞いた。 「変装大会」 「はぁ・・」 「明日は丸一日変装して高得点を競うらしい」 「丸一日って・・・授業はっ?!」 「ああ、参加資格は上級生だけだから、我々は通常通り授業していて 構わない」 それを聞いた土井はほっとしてお茶を飲んだ。 「しかしだな・・・変装の課題ってのが・・・」 山田はちろりと土井を見た。 一方、庄左ヱ門の部屋も大騒ぎだった。 「変装大会いいいいいいっ?!」 緊急招集がかかった は組は輪になって座り、庄左ヱ門の話を聞いて 驚く。 「ああ、参加資格は4年生から6年生まで」 「じゃ、オレ達関係ねーじゃん」 きり丸は頭の後ろに手を組み、壁に寄りかかった。 「ところがどっこい!」 「どっこい?」と全員が思ったが、突っ込む余裕はなかった。 「変装の課題ってのが土井先生!」 全員の頭上にお腹を押さえて青ざめている担任が浮かぶ。 「さらに!」 庄左ヱ門はまるで怪談でもしているかのような顔つきだ。 「ターゲットはボク達1年は組」 「・・・・・・・・・・・」 全員固まる。 しんべヱはもはや目が離れて鼻水が垂れていた。 「つまり、上級生が土井先生に化けて、ボクたちを騙しに来るってこと」 「げええええええええ」 「なんだそれ!!」 「なんでボク達なんだよ!!」 非難轟々。 「何故は組がターゲットか、だって?」 「そんなの明白だろ」 部屋の外ににんまり笑っている忍たまがいた。 「左七!」「伝吉!」 「違う!左吉だ!」 「伝七!!」 お馴染みのやりとりを苛立ちながらする。 「つまり、アホのは組は騙しやすいから」 「先輩達は土井先生を課題にリクエストしたんだろ」 済ました顔で解説した。 「課題って・・・上級生のリクエストなの?」 乱太郎が庄左ヱ門に問うと、庄左ヱ門は頷いた。 「じゃあ、せいぜい頑張りたまえ」 片手を上げて、涼しげに去っていく。 「ちっきしょ~~~」 「あったまきた!!」 「絶対見破ってやろうぜ!!」 金吾、団蔵、きり丸の目が燃える。 庄左ヱ門は説明を続けた。 「もしも上級生をボク達が『土井先生』と呼んでしまったらアウト。 その上級生には得点が入る。 一番得点の多い生徒が優勝するんだ」 「んじゃ、全員とりあえず『先輩』って呼んどきゃいいんじゃねーの?」 にんまり笑ったきり丸に、庄左ヱ門が首を横に振った。 「いや、もしも土井先生本人を誰か一人でも間違ったらボク達がアウト。 でも間違えなかったら」 「間違えなかったら?」 「ご褒美に食券1週間分貰えるって」 「食券?!1週間?!」 予想通り、1名の忍たまが銭目になり、大喜びで立ち上がった。 「あ、そうそう、ちなみにしんべヱを騙せた場合、ポイントが2倍」 「ボク?」 しんべヱがきょとんとした。 「あ、そっか、しんべヱは鼻が利くから」 乱太郎が納得した。 「あときり丸を騙したら」 「え?オレ?」 「ポイントはなんと3倍」 「え?なんでオレ?聞き間違いじゃないか?」 「いーや、きり丸」 「なんでだよ、鼻利かねーし」 動揺しているきり丸を、全員がにんまりして見つめた。 「・・・・・なんだよ?」 冷や汗をかいた。 「気をつけろよ、きり丸~」 「みんな狙ってくるぞ」 兵太夫と虎若が脅かす。 「・・・・・・;;」 [newpage] 翌朝 大会といっても内容が変装なので、特に学園長の挨拶もなく、 静かな朝を迎えた ・・・・・が 「どーせならさぁ、オレ達の授業がつぶれるような大会だったら 良かったのにな~」 「それじゃ土井先生が可哀想だよ」 乱きりしんがわいわい話しながら食堂へ入ると 「げげっ」 あまりの光景に妙な声を上げて一歩退いた。 食堂の中が土井だらけ。 どの土井も平然と朝食をとっている。 「なんじゃこりゃぁ」「うわぁ・・・」「せんせーがいっぱい」 3人とも苦笑した。 一人の土井がお膳を下げ、乱きりしんに近づいた。 「やぁお前たち」 前髪を掻き揚げる。 「これから朝食かい?」 ニヤリと笑うと歯がキラリと光る。 背後には何故か溢れるほどの薔薇が見えた。 「おはよーございます、滝夜叉丸先輩」 3人が声を揃えてペコリと挨拶すると、目の前の土井に雷のような 衝撃が走った。 「ななななななぜ私が滝夜叉丸だと?!」 「バレバレっすよ先輩」 きり丸はげっそりした。 「そうか、完璧に変装したつもりだったが・・・・私の美しさは隠しきれなかったと いうことか!」 滝夜叉丸はうっとりしながら前髪を再度掻き揚げた。 ふんふん鼻歌を歌いながら食堂を出て行く。 「自分に酔ってる土井先生って・・・・気味悪いね」 滝夜叉丸の背後を見ながら乱太郎が呟いた。 「ああ、恐ろしいな」「見たくなった」 きり丸しんべヱも散々なことを言ってると、また向こうから一人の土井が やってきた。 青ざめてお腹を押さえている。 すれ違った滝夜叉丸より明らかに背が高い。 「土井せんせーおはよーございます!」 「ああ、おはよう・・・・ん?よく私だとわかったな」 土井が驚くと、3人は嬉しそうに笑った。 そして土井が食堂に入ろうとすると、きり丸が止めた。 「あー先生、今入らない方がいいっすよ?」 「なぜだ?」 と聞きつつも食堂に入ると、「うぉっ」と変な声を上げて一歩退いた。 胃がキリキリと痛む。 「いててててて」 「だから言ったんすよぉ」 きり丸が心配そうに土井のお腹を擦った。 土井はきり丸の頭を撫で、「ありがとう、大丈夫だ」という無言の合図をした。 お膳をおばちゃんから受け取ると、幸せそうに冷奴を食べている土井の前に 座った。 「兵助、聞きたいことがある」 「なんでボクだってわかったんですか!!」 「一目瞭然だ!なんで課題が私になったんだ!誰だ私をリクエスト したのは!」 「ええと、全員・・・かな?」 それを聞くと、土井の目から だばーっと涙が溢れた。 「・・・ウチの子はそんなに上級生からバカにされてるのか;;」 「違います!違いますって!」 兵助が焦って両手をばたばた振っていると、猫のような丸みのある口をした 土井がゆったりとやってきた。 「あぁ~もう、土井せんせーったら!」 前髪をいじりだした。 「また髪が痛んでるぅ。 食後、グラウンドを歩いていると、全身土まみれで黙々と 穴を掘っている土井、 「いけいけどんど~~~ん」と言いながら走っている土井を見かけた。 校舎の傍ではケンカしている土井と土井。 「あれ、絶対潮江文次郎先輩と食満留三郎先輩だよね」 きり丸が小声で言うと、乱太郎としんべヱがうんうんと頷いた。 「先輩達、やる気あんのかな~~」 は組の教室で頬杖を突き、三治郎が呟いた。 「さっき図書室行ったらさ、もそもそ話す、暗~~い土井先生がいたよ」 伊助が言うと、周りは笑った。 「いやみんな、油断するな。 まだ一番手強い先輩に会ってない じゃないか」 庄左ヱ門が言うと、みんな真剣な顔つきになた。 「鉢屋三郎先輩、いつ来るかな」 しんべヱが小声で話した。 「三郎先輩だけは本気で騙しに来そうだよね」 乱太郎もついつい小声になる。 周りはうんうんと頷いた。 予想していると鐘が鳴り、土井が入ってきた。 「ほら静かに!授業始めるぞ」 土井の一声で全員の背筋が伸びる。 「本日は名声で取り入る術の復習を行う」 土井が黒板に書き、生徒は素早く忍たまの友を開いた。 「あの・・・」 一人の忍たまが手を挙げた。 「なんだ?庄左ヱ門」 「今日の予定はそのページではありません」 「え?そんなハズは・・・」 土井は慌てて自分の忍たまの友を開いた。 「土井先生は珍事出来開閉門の術を行うとおっしゃってましたよ、 ・・・・鉢屋三郎先輩」 冷静な庄左ヱ門の最後の言葉に、全員がぎょっとした。 「え?この人ニセモノ?!」と叫びたかったが、食券がかかっているので 我慢した。 「・・・まいったなぁ、なんでわかった?」 「なんとなく・・・同じ委員会だからでしょうか」 三郎は苦笑して変装を解いた。 雷蔵の顔になる。 「じゃ、大人しく退散するよ」 片手を上げて、あっさりと出て行った。 代わりにうんざりした土井が入ってきた。 「では授業を始める」 「せんせー、先輩達の見方するなんてズルイ~~~!!」 「授業遅れてるんじゃないっすか~~~?!」 伊助、きり丸が文句を言うと、そーだそーだと皆で騒いだ。 「仕方ないだろっ!!学園長命令だったんだから!! 今日はとばすぞ!珍事出来開閉門の術とは・・・」 馴染み深い授業が始まった。 昼食をとろうと食堂へ向かうと、今朝掘られた穴に落ちている 土井がいた。 「伊作せんぱ~い、大丈夫ですか~」と乱太郎が声をかける。 食堂に入ると、澄ました顔で上品に味噌汁を飲む土井。 喜三太としんべヱが抱きついた。 昼食を終えてグラウンドに行く途中、石火矢に頬釣りしている土井と すれ違った。 [newpage] 「やっと半日終わったな」 「頑張ろーぜ」 団蔵と金吾が言うと、は組全員「おー!」と手を挙げた。 「こらこら何やっとるか!授業を始めるぞ!」 グラウンドに山田が手を叩きながら来た。 慌てて整列する。 「えー、本日は落とし穴を作る練習をする。 裏裏裏山まで走るぞ!」 「ええええ~~~」 「ホレ文句言うな!走れ!」 は組は口を尖らせながらも山田を先頭に忍術学園を出た。 幾らか風はあるものの、陽射しが強い。 数分走っただけで、忍たまは汗びっしょりとなった。 やっとの思いで裏裏裏山に到着すると、全員地べたに寝そべった。 「なんだなんだ、だらしない」 全く息が乱れていない山田は呆れた。 「だって・・・はぁはぁ・・・」 「こんなに暑いし・・・はぁはぁ」 「そんなことでどうする!ん?!しんべヱはどうした!!」 「ここですぅ~~~」 遅れて顔を真っ赤にして走っているしんべヱと、付き添いの乱太郎 きり丸が来た。 「よし、これで全員だな!ではこれより落とし穴を各自作るように!」 休む間もなく授業が始まった。 「なお、ここから北西につり橋があるが、あれは壊れとる。 絶対渡らんように! あと、西には崖があるから注意するように!では開始!」 「はぁい」 は組はよろよろと散った。 乱太郎は南の方へ行った。 高い樹が生茂り、焼けるような陽射しが届かない。 「ここは涼しいな~よし、ここに決め~た!」 鋤を出し、土を掘り始めた。 きり丸は西の方へ行った。 「どこにすっかなぁ~」 暫く歩くと、水の流れる音が聞こえた。 「・・・川か?そういや山田先生が崖があるって言ってたな。 北に行くか」 きり丸は向きを変えた。 自分の腰まである草を掻き分けて進む。 「歩きづらいな~・・・・・ん?」 草を掻き分けたところに、キラリと光るもの。 「小銭っっ!!」 素早く拾った。 じっくり見る。 正しく、本物の小銭。 目の前を黒い物体が風のように横切った。 驚いたきり丸は尻餅をつく。 そして手には何も無くなっていることに気付いた。 見上げると、高い位置にカラス。 嘴には小銭らしきものが光っている。 きり丸は北西の方へ走っていった・・・・・ [newpage] 「山田先生!」 腕組みしながら生徒達の様子を見ていた山田のところに、もう一人の 担任がやって来た。 「ああ、土井先生、明日の授業の準備は終わりましたかな?」 「はい、私も実技の手伝いをします」 「そりゃ助かる」 そこに庄左ヱ門、伊助、三治郎が来た。 「山田先生、完成しました」 「うむ」 次に虎若、兵太夫、乱太郎、団蔵、金吾が来た。 少し遅れて喜三太。 喜三太は肩にナメクジを沢山乗せていて、山田にゲンコツをくらう。 最後にしんべヱが息を切らせて戻ってきた。 「大丈夫?しんべヱ」 乱太郎が駆け寄ると、「お腹すいたぁ」と目を回して仰向けに倒れた。 「ん?きり丸はまだか?」 一人足りないことに山田が気付くと、は組はきょろきょろと辺りを見回した。 「あのアホガラス~~~!!」 草むらから出ると深い谷とつり橋があった。 遥か下には流れの激しい川。 カラスは悠々と向こうの山へと飛んでいった。 「逃がすか!」 きり丸にはカラスしか見えていない。 つり橋を駆けて渡る。 ギシ・・・ 嫌な音に気付き、きり丸は立ち止まった。 「あ・・・しまっ・・・」 気付いた時にはもう遅かった。 腐った板がボロボロと崩れ、縄が引きちぎれた。 「まったく、アイツは穴掘るのにどんだけ時間かけてんだ」 山田が苛々しながら辺りを見回していると・・・ 遠くからきり丸の悲鳴 「きり丸だっ!!」 は組全員、青ざめた。 「向こうから声がしましたね」 土井は北西へ振り返った。 「まさか、あのつり橋を・・・」 山田が言い終わらないうちに、土井が駆け出した。 「きり丸!!」 は組も土井の後に続こうとしたが、山田に止められた。 「落ち着け!お前たちまで落ちるぞ!」 土井は数分も経たぬ内につり橋に着いた。 橋の中央の板がほぼ抜け落ち、縄も一本だけ繋がっている状態だ。 その橋の下に、切れた縄に捕まって今にも落ちそうなきり丸がいた。 土井は縄をきり丸に投げようとした・・・・が、 ブチッ 掴んでいた縄が切れた。 きり丸は仰向けの状態で、落下していく。 「きり丸!!」 土井は何の躊躇いもなく、きり丸目掛けて崖から飛び込んだ。 地面を蹴って飛び込んだ分、土井の落ちるスピードが速く、落下していくきり丸を 捕らえた。 左腕で抱きしめると、右腕で鉤縄を投げた。 無理な体勢であったにも関わらず、鉤縄は崖から突き出していた枝に 引っかかった。 振り子のように崖の側面に引き寄せられるが、土井は側面に着地するかのようにして 衝撃をかわす。 きり丸を見ると、相当怖かったのか、自分の腰に痛いくらい抱きつき、 震えていた。 [newpage] 「土井せんせーってば~~~」 忍術学園に戻る は組の後方を土井ときり丸が歩く。 「もう小銭につられないからっっ!!許してくださいよ~~」 「ダメだ!!まったくお前は!!」 つり橋に行った理由をきり丸から聞いた山田は開いた口が塞がらず、 土井は胃がキリキリと痛み出した。 担任二人に怒られ、さらに帰り道、罰を受けている。 もう勝手に危ない場所へ行かないようにと、土井に手を繋がれている ・・・・・という罰。 痛くも痒くもない罰だが、きり丸には恥ずかしくて堪らない。 前を歩く は組の仲間が後ろを振り返っては、にんまり笑う。 忍術学園の門を潜ると、きり丸は慌てた。 「せんせ!手!手!もういいでしょ?!」 「ほんとに反省してるのか?」 「してますしてます!」 上級生や、ましてや い組に見られたら、なんと言われるか。 真っ赤になっているきり丸を見下ろし、ふと疑問が生じた。 「きり丸・・・・そういえばどうしてわかった?」 「へ?」 「今朝といい、なんで私だとわかったんだ?」 上級生の変装大会など、すっかり忘れていた。 しかし何故わかったのかと言われても・・・・・ 何の迷いもなく飛び込む姿 自分を抱きしめる、逞しい腕 無理な体勢で鉤縄を投げる忍者としての腕前 本気で自分を心配して怒る姿 抱きついた時、手を繋いでいる時の温かいぬくもり・・・・ どれも土井先生。 疑う要素はどこにもない。 「・・・・だって土井先生は土井先生だもん」 俯いて小声で答える。 答えになってない返答に土井は首を傾げると、一人の土井がやってきた。 「それが、きり丸相手だとポイントが3倍になる理由だよ」 自分に話しかけてくるこの上級生は誰だろうと思っていたら、 土井が「雷蔵」と呼んだ。 「えっと・・・どういうことですか先輩」 「つまり、忍術学園でも家でもいつも一緒なのはきり丸だろ? 一番土井先生をよく知っているってことさ」 「そんなことないっすよ?土井先生、隠し事多いもん」 「コラコラ、人聞きの悪いこと言うな」 土井はきり丸の頬を軽く突付いた。 そこにまた二人の土井がやってきた。 「それに、『は組は騙しやすいからターゲットになった』って思っている ようだけど」 その土井は庄左ヱ門の頭を撫でた。 「えーと・・・尾浜勘右衛門先輩?」 「当たり」 「騙しやすいから・・・じゃないんですか?」 もう一人の土井が説明した。 「6年生も は組がいいと言ったんだぞ?あの先輩方が楽な課題を 選ぶと思うか?」 三治郎、虎若が「あ、竹谷八左ヱ門先輩だ」と気付いた。 「言われてみれば・・・」 「確かに・・・」 団蔵、金吾が自分の委員長を想像して納得した。 「じゃあ何故ですか?」 庄左ヱ門が聞くと、勘右衛門は笑った。 「一年は組が一番団結力があるからだよ」 言われた は組はきょとんとした。 「お前たちはよく担任の家に遊びに行ってるし、いつも一緒だし トラブルにもよく巻き込まれて、それを乗り越えているし」 「つまり結束が固いから、ニセモノを見抜く力も高い」 勘右衛門と八左ヱ門が説明した。 「ということはつまり・・・・」 は組全員で声を揃えて言う。 「それに、一年は組は騙したくなるほど可愛いからね」 雷蔵がにっこり笑った。 土井はこっちが本音だろうなと思い、苦笑した。 「あと、土井先生はボク達が大好きな先生ですから」 兵助と三郎も来た。 「教師相手に喜車の術を使うな;;」 土井はそう言いながらも頬が赤い。 「・・・私も、一年は組の担任なんだが」 山田がぽんと三郎の肩に手を乗せると、三郎は焦って「山田先生も 人気です」とフォローした。 「やれやれ、今のところ得点者はゼロか」 学園長が杖をつきつつ現れた。 「一年は組、なかなかやりおるのう」 そう言われると、は組は嬉しそうに笑ったが、上級生が本気でないので、 担任は喜べない。 「しかし、このままではつまらん。 何かもっとワクワクするような・・・」 そこへ 「土井半助ええええええええええ」 頭上から雄叫びが聞こえた。 見上げると、学園を囲っている屏の上に、諸泉尊奈門が立っていた。 縄鏢や鉄双節棍を振り回している土井 「ギンギーン」「いけいけどんどーん」と叫んでいる土井 沢山の宝禄火矢をジャグリングのように華麗に扱っている土井 石火矢を引き連れている土井 美しいポーズを決めて戦輪を回している土井 穴から顔を出している土井 鋏と櫛を持っている土井 「うおっっ?!なななななんだこれ?!」 尊奈門は仰け反る。 「プロ忍と勝負か!面白い」 文次郎の土井がニヤリと笑った。 「待て、ここは私がやる」 「いやオレだ!いっぺんコイツと戦ってみたかったんだ!」 仙蔵、留三郎も前に出た。 「いえ先輩!ここは私に!」と滝夜叉丸が前に出たら 「こいつは私の獲物だ!」と小平太が頭を押さえた。 「うああああああ、なんだなんだ?土井だらけじゃないか!」 尊奈門がうろたえていると、学園長の頭上にぴこんと電球が光った。 「いいこと思いついた!!」 「は?」 「これより変装大会を尊奈門対決大会に変更する!」 「なにいいいいいいいい?!」 尊奈門だけぶっとぶ。 「短時間で尊奈門に勝った者が優勝じゃ!!」 「ちょっと待て!私が負けるのが前提か!!」 嘆いていると、5年生の土井も寄ってきた。 「いい実戦経験になるぜ」 「腕試しにはちょうどいい」 八左ヱ門と兵助が指を鳴らした。 他の上級生もやる気満々で詰め寄る。 救急箱を持った土井だけは穏やかに「尊奈門さーん、気をつけて くださいねー」と待機していた。 「私は本物の土井と勝負がしたいんだああああああ」 尊奈門が屏の上を走って逃げると、上級生が一斉に 「うおおおおおおおおお」と追いかけた。 「結構気付かれないもんですね」 きり丸は、は組の後ろにしゃがんで隠れている本物の土井に 声をかけた。 「いいんですか?土井先生、尊奈門さん大変なことに なっちゃってますけど」 乱太郎が苦笑していると 「これに懲りて、諦めてくれるといいんだがなぁ」 と土井はため息をついた。 きり丸は真顔で土井の耳元で囁く。

次の

忍たま乱太郎の土井先生の過去や年齢は?声優のプロフィールについても

土井先生

来歴・人物 [ ] 家庭料理の第一人者であった料理研究家・の次男として生まれる。 、産業教育学科(現・経営教育学部経営教育学科)卒業。 ・でを、大阪の「」でを修業。 に「土井善晴おいしいもの研究所」を設立している。 特技は。 父・勝がレギュラー出演していた『』()を引き継ぎ20年以上出演するとともに、父親譲りの丁寧で上品な話し方(いわゆる)・独特の柔らかい関西イントネーションで『』()などの料理番組に多数出演している。 中学生の時はの熱烈なファンで、テレビ局まで追いかけてサインを貰い、その際の記念写真をテレビで公開したことがある。 が土井のモノマネを行っていた事もあり、大泉が出演していた「」にも居酒屋の主人役として出演した。 マラソン [ ] から健康のため、を始めた。 サロマ湖100kmウルトラマラソン(2008年より、5回完走)• 富士登山競走山頂コース(チャレンジ2回)• 奄美大島60kmジャングルトレイルマラソン• 丹波ウルトラマラソン(60km)• 富士五湖チャレンジウルトラマラソン(60km)• 北海道ニセコトレラン(45km) 活動 [ ] 食文化教育活動 [ ]• 十文字学園女子大学招聘教授 和食文化概論(2018年 - )• 甲子園大学客員教授(2018年 - )• 東京造形大学非常勤講師• 学習院女子大学非常勤講師• 元早稲田大学文化構想学部非常勤講師 食の場のプロデューサー/地域食の洗練化、レストラン総合開発 [ ]• 兵庫県丹波篠山• 「特産館ささやま」 - 無文銭弁当・笹ちまき・牛トロ丼• 長野県小布施• 「小布施堂本店」 - 季節の料理(ミニ懐石・甘味)• 「傘風楼」 洋食 ・「蔵部」(かまど和食)• 栗菓子「朱雀」• 長野オリンピック アン王女パーティ企画演出• サマランチ会長パーティ企画演出• 岡山県西粟倉• 栃木県那須• 東京都・大手町ファーストスクエア NTT都市開発• 日本のお料理「味櫟」 - 櫟膳(スタッキング可)、パレット皿(魯山人絵の具皿)• 長野県 善光寺• 西之門よしのや「レストランさくら」- さくら懐石(さくら弁当・あつあつ蕎麦) 講座 [ ] WACCA池袋 /おいしい日本・おいしいもの研究所主宰 日本の料理を初期化し、命を作る仕事である家庭料理の本質を伝える。 変化する料理とその周辺を考察した食文化をメディアを通して提案する。 日本の未来を担う若者に持続可能な日本らしい食を伝えることを目的としている。 「土井善晴の勉強会」• 「大人の食育」• 「土井善晴のお稽古ごと」 対談・講演会 [ ]• との対談「」• 「日本の文化を感じる講演会シリーズ」• 土井善晴が「この人の言葉を聞いてもらいたい」という方をお迎えする講演会• 土井善晴の和食() 2016年7月〜 毎週金曜日に旬の食材を用いた料理を動画で配信。 知っていそうで知らなかった料理の「なぜ」や、テキストレシピでは分からない「こんなもん」をじっくり解説している。 早回しのレシピ動画が流行る中、本アプリはさながら「料理教室」に通っているような動画であり、自分でメモを取りながら学んでいくのが特徴。 Apple社、App Store「Today」掲載実績あり(2019年1月,6月) メディア [ ] テレビ [ ] 現在 [ ]• (不定期、)• () - 審査員• (不定期、毎日放送)• (、2017年10月2日 - ) 過去 [ ]• (2003年4月5日 - 2008年3月22日、)• () - 第7回「なんてったってアイドル!」(2004年10月14日 - 2004年12月23日)で居酒屋の主人役としてと共演• (2005年6月 - 2006年3月24日、テレビ朝日)- 「土井善晴のおいしい一品」金曜• (テレビ朝日)• 「」(木曜、2006年4月 - 2009年3月)• 「」(月1回木曜、2008年11月 - 2009年3月、2010年4月 - 2012年4月)• (テレビ朝日)- 「土井善晴のおいしい散歩」(月1回金曜、2012年5月 - 9月)• (2009年7月11日、テレビ朝日)• 旅のチカラ「世界一の美食の町へ」(2013年5月29日、NHK)• 「世界一の美食の街」と称賛されるスペイン・バスク地方の小さな街、サンセバスチャンを訪れる。 (2016年7月21日、NHK)• (読売テレビ・日本テレビ系)• 「ぐるっと琵琶湖!美味いもん探し」(2017年1月15日)• 「玄界灘 旬のうまいもん探し」(2017年9月3日)• 「うまい!めでたい!正月のごちそう探し」(2017年12月31日)• 「夏を乗り切る! ごちそう探し」(2018年7月29日)• 「瀬戸内でええもん見つけた」(2019年2月3日)• (NHK)• 「正月料理のこころ」(2016年)• 「夏の料理は五感で楽しむ」(2016年7月8日)• 「料理する意味」(2017年2月7日)• 「和食の感性」(2018年2月26日)• すごいですよ(テレビ朝日)- MC 爆笑問題• (不定期 NHK)• きょうの料理60周年記念番組『』(2018年3月28日)• (2018年9月2日、)- MC ラジオ [ ] 現在• 『』 ないとガイド 旬の味・旬の食材()• 『 』(J-Wave)- MC クリス智子 過去• 『ラジオ深夜便』 にっぽんを味わう 和食(毎月第3水曜日(火曜日深夜)、NHKラジオ第1) CM [ ]• 日清クッキングフラワー() 2015年5月~• (2016年〜2018年) 著書 [ ]• 『週刊 土井善晴のわが家で和食』(、全101巻)- 〜まで毎週刊行しており 、その後改訂版としてからまで刊行された。 なお、同社では刊行終了後もおよび販売をまで行っていた。 『土井家の「一生もん」2品献立』(講談社、2004年12月)• 『土井善晴のレシピ100』(学研プラス、2012年3月)• 『おいしいもののまわり』(グラフィック社、2015年12月)• 『一汁一菜でよいという提案』(グラフィック社、2016年10月) - 「料理のハードルが下がった」など、多くの人から共感を得ている。 糸井重里氏との対談で本書に触れるなど、話題となった一冊。 『土井善晴の素材のレシピ』(テレビ朝日出版、2019年3月) 執筆 [ ]• ひととき(新幹線車内誌・株式会社ウェッジ)• 毎月連載「土井善晴のおいしいもんには理由がある」(2018年11月〜)• 波(新潮社)• 毎月連載「おいしく生きる」(2018年11月〜) 脚注 [ ] [].

次の