つめたい よる に。 つめたいよるに|6年生|小学生のための読書案内|家庭学習研究社

江國香織さんの短編集「つめたい夜に」を読んでの感想・備忘録

つめたい よる に

駅で階段につまずいた昼間の自分を、シャワーを浴びているとふと思い出して、あーっと声をあげることがある。 穴があったら入りたいなんて言葉では足りず、別の世界に逃げこみたくなる。 そんなとき、私は本を読む。 登場人物に降りかかる災難や心の深い部分に触れると、自分の恥ずかしい失態や悩み事がどれだけちっぽけか気づくことができる。 美しい言葉に触れ続けたからか、読んだあと世界の見え方が鮮やかに変わることもある。 短編集を好きになったのは、中学生のときだ。 きっかけは江國香織さんの『つめたいよるに』。 この本に収録されている「デューク」という短編が国語の教科書に載っていた。 「私」は飼っていた愛犬、デュークが死んでしまい泣いている。 見知らぬ少年がそんな「私」を気遣ってくれたので、お礼をするために一緒にその日を過ごすことになる……。 当時、私自身が愛犬をなくしたばかりだったということもあり一気に引き込まれ、何度も読み返した。 少年の優しさや、読めば読むほど感じる切なさに心が震えた。 たまらなく大好きだった。 なぜ、この話はこんなにも私を魅了するのか。 歌うような言葉やストーリーの素敵さはもちろんだが、それらが短編にすっきりとおさまっていることも大きな理由だったのだと思う。 一話を読み終えるまでたったの十分。 その十分間で私は救われた。 愛犬のいない寂しさを、つめたいものからあたたかいものに変えてもらったのだ。 「デューク」が『つめたいよるに』に収録されていると知り、私は本屋に走った。 他の話もこどもの夢のフルーツパフェのように、とびきりだった。 逆三角形のガラスの器はどこか儚く、沢山のフルーツがここに収まっているなんて奇跡だ、と思う。 さくらんぼもシロップの味のみかんの数も少ないかと思いきや、充分。 そのくせ、食後の甘美な物寂しさったら。 その贅沢を知り、私はすっかり短編集の虜となったのだ。 さんの『』を読んだときは高校生活の真っ最中だった。 恋愛のことがよく分からない私に、この本は衝撃を与えた。 十人十色の恋が、余すところなくきちんと詰め込まれている。 幼馴染みに自分の恋の香りを悟られないようにする少女や、年上の女性に彼氏を奪われた少女が真っ赤な口紅を塗ってした決別のキスは、自分の周りにある話のようでいてどこか遠く、ドキドキした。 ふらっと立ち寄ったお店で、店員さんに試しに大人な香水を吹きかけてもらう。 今はここにあるのに、いつか消えてしまう繊細さ。 自分がこんなものを知ってしまっていいのだろうかという背伸び感が、この本にも存分にあった。 たまらなかった。 喜びも怒りも悲しみも全て「うっとり」に包みこまれた短編集。 憧れの恋愛はこの短編集のなかにある。 憧れでなく日常の恋がしまいこまれているのは、さんの『』だと思う。 ここに収録されている話は、他の短編よりも更に短めで、読みやすい文で日常を切り取っている。 それだけだとなんてことない話に思えるが、間違いであることにすぐに気がつく。 どの話も、ハスキーさと重力を持っているのだ。 どこにそんな風に思う要因の言葉があるんだろう、と改めて探しても見つけられない。 でも、読み終えると切なさに近い感覚に陥る。 地元にしかないと思っていたファミレスをふいに見つけた感覚にも近い。 なんてことない日常を改めて想うと、心がきゅっとなる。 たった十分間できゅっとしながら、主人公の日々を追体験し世界の見え方が少し変わる。 短編集にそっと救われ、私は歌なんて口ずさみながらシャワーを浴びるのだ。 それは「デューク」で少年が心からのお礼を告げたことで「私」がふと前を向けた状況に似ている。 この文章を読み始めて、そろそろ十分。 この十分があなたの目の前の世界を少し軽やかに変える何かしらのきっかけとなりますように。 (おおとも・かれん=1999年、群馬県生まれ。 女優、モデル) 1964年東京都生まれ。 1987年「草之丞の話」で「小さな童話」大賞、1989年「409ラドクリフ」でフェミナ賞、1992年『こうばしい日々』で坪田譲治文学賞、『きらきらひかる』で紫式部文学賞、1999年『ぼくの小鳥ちゃん』で路傍の石文学賞、2002年『泳ぐのに、安全でも適切でもありません』で山本周五郎賞、2004年『号泣する準備はできていた』で直木賞、2007年『がらくた』で島清恋愛文学賞、2010年『真昼なのに昏い部屋』で中央公論文芸賞、2012年「犬とハモニカ」で川端康成文学賞、2015年『ヤモリ、カエル、シジミチョウ』で谷崎潤一郎賞を受賞。 他の著書に『ちょうちんそで』『はだかんぼうたち』『なかなか暮れない夏の夕暮れ』など多数。 小説以外に、詩作や海外絵本の翻訳も手掛ける。 この本へのご意見・ご感想をお待ちしております。

次の

江國香織『つめたいよるに』

つめたい よる に

(2003年5月読了) 短編集である。 以前少しだけ(「とくべつな早朝」だけ)読んだことがあるが、このたび全編読了した。 「とくべつな早朝」の思い出 ちなみにその「とくべつな早朝」は、大学時代に友人の家で酒を飲んだ折、ごろ寝をしながら読んだのだが、確かそれは友人が恋人に振られたとか、そういうくさくさした飲みだったので、読み終えて「なんだよちくしょう」みたいな気持ちを友人と共有することになったのを鮮烈に憶えている。 それはもちろんただの八つ当たりであって、再読した「とくべつな早朝」は、とある特別な冬の夜のしっとりした感じと、清冽な朝の空気が感じ取れてよかった。 それ以外の作品 それ以外にも合計20篇くらいの小品(掌編?)が収録されていて、色々と多彩なものが入っている。 「桃子」「草之丞の話」といった初期の絵本作品もあるし、「ねぎを刻む」のような女性の怖い部分を見せられる話もあったりする。 いつぞやので出題され、泣いてしまう受験生が出たという「デューク」もそうだが、前者の童話に近い作品群は、さらりとしていながら「なんかいいな」と思わせられる。 それと「たち」はモチーフの使い方が巧い。 どの話も、一定の「キレイキド」のようなもので描かれている感じがする。 そこが好みの別れるところだろうが私は面白く読んだ。 一人旅なんかに持っていくといい感じかもしれない。

次の

【楽天市場】新潮社 つめたいよるに /新潮社/江國香織

つめたい よる に

ジャンルでさがす• これから出る本をさがす• フェア• ジャンルでさがす• ジャンルでさがす• 電子洋書• フェア• ジャンルでさがす• 和雑誌• 海外マガジン• これから出る本をさがす• 和雑誌• フェア• 海外マガジン• ジャンルでさがす• DVD• フェア• ジャンルでさがす• フェア• 北海道・東北• 北関東・千葉• 神奈川• 中部・北陸• 中国・四国• ウェブストアに171冊在庫がございます。 (2020年06月29日 13時09分現在) 通常、ご注文翌日~3日後に出荷されます。 入手できないこともございます。 【カートに入れる】を選択後に全国店舗の中からお受け取り店をご指定下さい。 尚、受取店舗限定の特典はお付けできません。 内容説明 デュークが死んだ。 たまご料理と梨と落語が好きで、キスのうまい犬のデュークが死んだ翌日乗った電車で、わたしはハンサムな男の子に巡り合った…。 出会いと分れの不思議な一日を綴った「デューク」。 コンビニでバイトする大学生のクリスマスイブを描いた「とくべつな早朝」。 デビュー作「桃子」を含む珠玉の21編を収録した待望の短編集。 著者等紹介 江國香織[エクニカオリ] 1964(昭和39)年東京生れ。

次の